人はみな、あめつち(天地)の雫


今回の熊野紀行を書くまえに私と熊野のご縁を記してみようと思います。
こんな機会がなければ、あまり文章にすることもないと思いますので、おつきあい頂けるとうれしいです。

熊野という土地のクマ、という言葉には籠る、隠れる、黄泉、などの意味をふくみます。
その言葉通り「死の中に隠れる」ほど遠い場所。
物理的な距離もさることながら心理的な距離のある場所で、強烈なインスピレーションを感じなければ
そこまで苦労して行こうとは思えない場所でもあります。
京都のように華やかな神社仏閣がコンビニエンスに連なる場所ではないし、最新のリゾートホテルもない、
街並は普通、山と海と水と太陽があり、、そしてどこよりも深く暗い影がある。
しかし人生の孤独の中に図らずも迷い込み、人間の暗闇におののいたものならば
「熊野に行ってみよう」と誘われる不思議の土地なのです。
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わたし自身、初めて熊野に訪れた頃は人間世界の影におののき、怒りや批判の心を抱いていました。
そのときの旅の目的は日本の祈りと宗教美術の関係性でした。
京都、奈良、桜井、高野山、と巡り、もし体力が許すならば、若いときに図版を見て感動した
「那智滝図」の那智の滝をひとめ見たいと思っていました。
熊野がどういう土地かも知らず、ただ芸術的な興味中心でした。

カメラとお金と3日間の着替えをリュックにいれ、宿も決めずにいきあたりばったりの一人旅。
しかし、しょっぱなから高熱を出し京都のホテルで3日寝込んで、体力ぎりぎりの状態に。
1日1日時を数えるように今日もなんとかいけた、明日だめならすぐ東京へ戻ろう、そんな調子で旅をしました。
なんとか最終目的地の熊野にたどり着いたときは感激ひとしお、ボロボロに疲れた体を熊野本宮の湯の峰温泉に漬けました。
一晩あけた朝には驚くほど体が軽くなり、元気になっていました。
熊野本宮にお参りをすませ、新宮の海を見ているとき、光にも闇にも自分の命にも、全てに感謝の気持ちが湧いて来ました。
自然への感謝と感動、命の喜び、それこそが祈りなんだ、、お題目を唱えなくても、何かの宗教に属したり
熱心に神社仏閣にいかなくても、感謝の実感があればいい。
そして人種や性、地位や貧富、宗教の種類、大自然の前ではそんなものは無意味、どんな人も熊野では全て受け入れられ
「そのひとならでは」の祈り、感謝と感動を土産にここからまた人生を始めればいいんだ。
まるで新たに生き返ったような気持ち、、、ありがたいなあ、、と心から思いました。
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深い予備知識もなく訪れたのですが、結局わたしは熊野ならではの体験をしたのです。
それから機会を見てはこの土地を訪れ、感じた空気を表現した作品を撮るようになりました。
ここにあげた作品がそうなのですが、全て鏡に映ったモノクロ風景です。
白黒はっきりしない、境界線はぼやけ、ふんわりと包み込みながら、生々しくいのちを育む世界、それが私の愛する日本、魂の故郷なのです。

今の時代はポジティブ志向で、弱者切り捨ての意識やセレブ志向が横行していますが、
実際は堂々と大通りを胸をはって生きる人ばかりではない。
私を含め、細く暗い道を這いつくばって進むしかない人生が殆どなのでは、と思います。
しかし熊野は世界のくらさ辛さを否定するより、闇を踏み細い道を進む者の矜持を教えてくれます。
闇を認めるということは相対的に光を認めることであり、また優美を生きることなのです。
優美な者は、弱者や愚かさを残酷に切り捨てたり、弱さやくらさを心底から否定はしません。
否定をせず切り捨てないということは、どんな状況でも希望(ひかり)を信じているということ。
そして、光も闇もひっくるめてこの世界を認め生き抜くという、厳しい覚悟を持つことでもあります。

ひとはみな天地の間にたゆたう雫、、一度の人生であっても、魂を雫とすれば海にながれ、空に蒸発し、
雨に生まれ変わり、滝に落ち、土にしみこみ、なんども産まれかわる、かわってゆけます。
かわることのできない人はいないのです。
それに比べれば単純な上昇志向は、スノウボールのなかの水のようなものです。
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さて、前置きが長くなってしまいました。
今回の旅は独身中年の私と、ご主人を突然なくした還暦をすぎた女性との二人旅。
1日バスとJRの移動に費やし、紀伊勝浦に1泊して、翌朝から3日間の熊野伊勢詣でと参ります。
明日からは、こちらにあげた写真とは全く違う熊野の表情をお楽しみください。
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by kaorise | 2009-11-03 21:55 | Japan | Trackback
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